駒右衛門は、かつて材木問屋の主だった。今は「困っている時はお互い様ですから」と何かにつけて親身に世話をしてくれる木戸番小屋の夫婦に支えられて、一人暮らしを続けていた。ある日突然、二十年前に別れたままの娘が訪ねてきた・・・（時代小説）　横浜録音図書のおなじみ「横浜CD文庫」リメイク版！

無残に焼け焦げた勝次の手。「その左手で火消しは無理だ。」・・いつだって真先に素っ飛んで行って、他の組に消口をとられたことのねえ俺が、どうして南組から追い出されなくってはならねえのだ・・・　人は、傷つくほど優しくなれるーー江戸は大島川沿いの澪通り、それぞれに苦しみをかかえて生きる人々と、見守るともなく見守る木戸番の夫婦の日々の物語。壱　監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

「俺は、ばかなことをしている。」土埃と涙で顔を汚し、清太郎に恕りついてきた女房のおうのの姿が目の前に浮かんだ。わたしのせいで勘当の解かれるのが遅くなったと、泣いている声も聞えた・・・　人は、傷つくほど優しくなれるーー江戸は大島川沿いの澪通り、それぞれに苦しみをかかえて生きる人々と、見守るともなく見守る木戸番の夫婦の日々の物語。弐　監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

「ねえ、どうしてお金持になったおちかちゃんが植木職人の銀次さんと一緒になるのは健気で、貧乏人のわたしが三桝屋の若旦那と一緒になるのは図々しいんですか」泣くおていに笑兵衛は笑ってみせた。・・・　人は、傷つくほど優しくなれるーー江戸は大島川沿いの澪通り、それぞれに苦しみをかかえて生きる人々と、見守るともなく見守る木戸番の夫婦の日々の物語。参　監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

「笑兵衛さんは？」おえんは、富山に行った彫師の夫から半年もの間何の音沙汰もなく、子供は死産っだったおえんは、壁に寄りかかって笑兵衛を見上げた。「また、お見舞いに来てくれる？」・・・　人は、傷つくほど優しくなれるーー江戸は大島川沿いの澪通り、それぞれに苦しみをかかえて生きる人々と、見守るともなく見守る木戸番の夫婦の日々の物語。四　監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

いつかおすまが息絶えた時、もっと生きていてくれと叫んでくれるのは 。「待っといで。今、つめたい水を汲んでくるから」「すまないねえ」「何を言ってるのさ。友達じゃないか」・・・　人は、傷つくほど優しくなれるーー江戸は大島川沿いの澪通り、それぞれに苦しみをかかえて生きる人々と、見守るともなく見守る木戸番の夫婦の日々の物語。五　監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

「わたしゃ、お前のふところから見事に財布が抜き取れるようにと、あちこちの神様や仏様に願かけをしてね、商売断ちをしちまったんだ」たとえおまんまさえ食うに食えなくなっても。・・・　人は、傷つくほど優しくなれるーー江戸は大島川沿いの澪通り、それぞれに苦しみをかかえて生きる人々と、見守るともなく見守る木戸番の夫婦の日々の物語。　監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

「人の言うことは信じちゃいけないって？　そうかい、わかったよ。わたしゃもう、お父つぁんの言うことも信じないよ」おくめは、父親の手を乱暴に掴んだ。痩せて、骨ばった手であった。・・・　人は、傷つくほど優しくなれるーー江戸は大島川沿いの澪通り、それぞれに苦しみをかかえて生きる人々と、見守るともなく見守る木戸番の夫婦の日々の物語。　監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

父を亡くし裸足で茹卵を売って糊口をしのいでいた娘が、とうとう呉服商田原屋の嫁にまでなった。なのに「深川へ帰りたいんです」少女だった女は泣く。「人の心まで粗末にするようになって」・・・　人は、傷つくほど優しくなれるーー江戸は大島川沿いの澪通り、それぞれに苦しみをかかえて生きる人々と、見守るともなく見守る木戸番の夫婦の日々の物語。　監督/吉田純子・編集/三好達也_林岳史

大江戸の八百八町の町ごとに木戸があり番人がついていた。大島川沿い澪通りの端にある深川中島町の木戸番は、不思議に品のよい笑兵衛とお捨夫婦である。そこに将棋を指しに来る者、茶を飲みに寄る者、意識をなくして運び込まれる者・・それぞれに苦しみをかかえて生きる人々と、それを見守るともなく見守る木戸番の夫婦の日々の物語。人は、傷つくほど優しくなれる──深川澪通りシリーズ第一作　　深川澪通り木戸番小屋｜両国橋から｜坂道の冬｜深川しぐれ｜ともだち｜名人かたぎ｜梅雨の晴れ間｜わすれもの　収録